任意整理は、裁判所を利用しない債務整理の方法です。破産や民事再生に比べて自由度が高い方法であり、特に過払い金の返還が見込めるようなケースでは多用されます。
- Q1.任意整理とはどういう手続ですか?
- Q2.債務整理の方法として任意整理を選択するのはどのような場合ですか?
- Q3.利息制限法による引き直し計算や過払い金というのはどういうものですか?
- Q4.貸金業者には、「みなし弁済」という制度の適用があり、高利息であっても受け取る権利があると聞いたのですが?
- Q5.どのくらいの期間、取引を継続していれば、過払い金の返還を求めることができるのでしょうか。
- Q6.消費者金融業者とどのような取引をしてきたか、手元に資料がないのでわからないのですが、このような場合でも計算できるのでしょうか?
- Q7.貸金業者が過払い金の返還に応じない場合はどうするのでしょうか?
- Q8.トータルで、債務が残ってしまう場合はどうするのでしょうか?
- Q9.任意整理のメリットは何ですか?
- Q10.任意整理でもブラックリストに登録されてしまうのでしょうか?
- Q11.任意整理の場合の費用はどの程度かかりますか?
- Q12.弁護士に依頼せず、任意整理を行うことはできますか?
Q1.任意整理とはどういう手続ですか?
A1.弁護士が依頼者に代わって債権者と交渉し、個別に返済額や返済期間について和解をすることです。
Q2.債務整理の方法として任意整理を選択するのはどのような場合ですか?
A2.利息制限法に基づく金利の引き直し計算によって、大幅に債務を圧縮できたり、過払い金の返還請求が出来たりする場合、免責不許可事由があり、自己破産では免責を得られない場合、条件が満たされず給与取得者再生を利用できない場合などに任意整理を選択することが多いです。
Q3.利息制限法による引き直し計算や過払い金というのはどういうものですか?
A3.消費者金融業者は、これまで例えば年29.2%などの高利を収受してきました。しかし、利息制限法という法律があり、借金の利息の上限を
| 借入元金10万円未満の場合 | 20% |
| 借入元金10万円~100万円未満の場合 | 18% |
| 借入元金100万円以上 | 15% |
と定めており、これを超える利息は無効となります。
従って、これまでずっと高い金利を払い続けてきた場合は、超過利息分は元本の返済に充てられるべきことになります。
そこで、取引期間が長期間に及ぶ場合は、このような計算のし直しによって、借入金の大幅な圧縮をすることが可能になりますし、元本も返済し終わっており、過払いが生じているとして、その返還を求めることも任意整理では可能になるわけです。利息制限法による引直し計算は、エクセルなどの表計算で行うと便利です。
Q4.貸金業者には、「みなし弁済」という制度の適用があり、高利息であっても受け取る権利があると聞いたのですが?
A4.利息の上限を定めた法律は利息制限法と出資法の2つがあります。出資法では、利息は最高年利29.2%であり、この金利と利息制限法に定める金利との差の部分は、いわゆるグレーゾーン金利と言われています。
みなし弁済とは、債務者が任意に利息を支払った場合には、このグレーゾーン金利が、一定の要件の下、有効になるという貸金業法43条で設けられた制度です。
しかしながら、2006年1月の最高裁判決は、「利息制限法を越える金利を支払わないと、一括返済を求められるような状況での支払いには、任意性が認められないから、みなし弁済は成立しない。」と判断しました。これによって、みなし弁済が認められることは、実務上、ほとんど無くなることが確定しました。
Q5.どのくらいの期間、取引を継続していれば、過払い金の返還を求めることができるのでしょうか。
A5.約7年間、消費者金融業者から借りたり返したりという取引を継続している場合は、概ね元金はゼロ円になることが多く、それ以上取引を継続していれば、過払い金の返還を求めることができます。もっとも、これは、一定の借入残高を維持している場合のことで、途中で借入額が増えた場合には、元金がゼロになるためにはもっと長い取引期間が必要ですし、途中で取引が中断している場合も、7年以上の期間が必要になります。具体的に過払い金が発生しているかどうかは、任意整理に着手して、全取引について計算し直さないときちんとしたことはわかりません。
Q6.消費者金融業者とどのような取引をしてきたか、手元に資料がないのでわからないのですが、このような場合でも計算できるのでしょうか?
A6.弁護士が貸金業者に対して、過去の取引履歴を開示するよう請求すれば、貸金業者は取引の履歴を提出してきますので可能です。ただ、10年以上前の取引については、貸金業者のほうで資料を破棄しているなどと言って開示してこない場合もあります。そこで、取引期間が長い場合は、過去の契約書や振込控等の証拠があれば有利に交渉を進めることができます。開示が十分でない場合は、債務者の方からの情報を元に推定計算を行うこともあります。
Q7.貸金業者が過払い金の返還に応じない場合はどうするのでしょうか?
A7.貸金業者の中には、任意による交渉では過払い金の例えば8割とか、9割しか返さないという対応をするところがあります。このような場合、請求額が多額に上る場合は、訴訟を提起した方が手間暇を考えても有利な場合があります。訴訟を提起した場合は、たいてい、第一回までの口頭弁論までの間に、全額を返還するという姿勢に変わりますので、証拠調べなどをしなくても、迅速に多くの金額を回収することが可能です。過払い金についての詳細は「過払い金請求の現状」のページをご覧ください。
Q8.トータルで、債務が残ってしまう場合はどうするのでしょうか?
A8.金利、遅延損害金の支払いなしで、元金のみを分割して弁済する方向で交渉を行います。貸金業者との交渉では、分割弁済をする際の期間の目処は3年間であり、これを超えると交渉は難しくなってきます。とても多額の債務が残ってしまい、到底返しきれない場合は、自己破産の申立や、勤め人であれば給与取得者再生を考えます。しかし、自己破産を申立てても、免責を得る見込みがない場合や、給与取得者再生を利用する条件が整わない場合は、困難ですが5年間の長期分割弁済の交渉を行います。
Q9.任意整理のメリットは何ですか?
A9.例えば、自動車が生活するにはどうしても必要で、車のローンだけは支払いを続けたいような場合、任意整理であれば、車のローンのみを除外して債務整理するようなことが可能です。自宅を残したいので、住宅ローンのみは支払いを続けたい場合も同様です。自己破産申立では、このように任意に債権者を選択するようなことはできず、車のローンや住宅ローンも支払いを止めなければなりませんから、所有権留保に基づき、車を引き上げられてしまったり、自宅も手放さないといけなくなります。また、勤務先から借り入れがある場合は、破産や民事再生では、勤務先に債務整理手続をしていることを知られてしまいます。任意整理は、家族や勤務先などに知られることなく、進めることが出来る場合が多いこともメリットの一つです。
Q10.任意整理でもブラックリストに登録されてしまうのでしょうか?
A10.任意整理の場合でも、貸金業者が加盟している信用情報(いわゆるブラックリスト)に登録されてしまいますので、大体5年くらいは新規の借り入れをすることができません。どのような債務整理手続でも、ブラックリストに登録されることを避けることはできません。しかし、借入れに頼らない生活を確立することが一番大切だと思います。
Q11.任意整理の場合の費用はどの程度かかりますか?
A11.弁護士に依頼される場合、一般に債権者一件あたり金2万円(税別)の着手金が必要になります。また、長期分割弁済の合意が成立した部分についてその金額の5%、債務圧縮が出来た部分についてその金額の10%、過払い金の取り戻しが出来た部分についてその金額の20%の成功報酬が発生します。もっとも、過払い金の返還が見込める場合は、着手金を過払い金によって支払うことも可能ですので、弁護士によく相談されるとよいと思います。
Q12.弁護士に依頼せず、任意整理を行うことはできますか?
A12.お勧めはできません。弁護士が受任した場合は、貸金業者は直接、債務者に督促など接触することを禁止されていますので、生活の平穏が保たれますが、債務者本人が直接交渉を行う場合には、このような効果が得られません。また、過払い金の返還が見込める場合には、弁護士に依頼した方が有利に展開できます。過払い金が見込めないようなケースで、弁護士に依頼しない場合、特定調停を利用されることをお勧めいたします。
