症状固定と等級認定

症状固定とは、これ以上治療を行っても、症状の改善が期待できなくなった状態をいいます。症状固定すれば、それ以降の治療費の支払は原則認められず、それまでかかった治療期間に応じて傷害慰謝料(入通院慰謝料)の額が確定し、さらに後遺障害等級の認定によって、後遺障害慰謝料と逸失利益が算出できるようになるという点において、重要な意義を有するものです。

1.症状固定の意義

実務上、傷害慰謝料、すなわち入通院慰謝料は、症状固定時までにどれだけの期間入通院をしたかによって算定されることになっています。また、治療費、交通費、休業損害などは、症状固定時までに生じたものが損害の対象になるのが原則です。さらに、後遺障害が残った場合には、後遺障害等級認定をもらうことによって、後遺障害慰謝料、逸失利益の算定の基準となりますので、この点においても極めて重要です。逸失利益は症状固定時から、原則67歳までの期間、後遺障害等級に応じた労働能力が喪失するとして計算されることになります。

2.後遺障害診断書を作成すべき時期

後遺障害診断書を医師に作成してもらう際、そこに記載された症状固定日が、原則、上記の症状固定日となります。それ以降の治療費は損害の対象にならなくなるのが基本ですので、後遺障害診断書を医師に作成してもらうべきか否かは慎重に判断すべき事柄です。基本的には、医師とよく協議して、治療を継続しても症状の改善が見込めるのか否かという観点から時期を見定めるべきです。
この点、加害者の任意保険会社は、治療期間が長くなってくると、以後の治療費の支払を拒絶する旨通知してくることがあります。症状改善の見込みがあるのに、このような通知が行われ、治療費の支払が停止されることは、被害者にとっては酷なことですが、他方で、そこで症状固定と見ることは、後遺障害等級としては高めになるということですから、一長一短があります。なお、症状固定日までの入通院期間が傷害慰謝料の算定基準になりますが、経過観察の目的で例えば2週間に1度程度の通院を行っている場合は、通院期間がそのまま基準になるわけではなく、実通院日数を3.5倍して通院期間を修正して計算することがよく行われますので、長く通院すればいいというものではありません。
以上のようなことを頭に入れて、主治医とよく話合って決めるべきです。

3.後遺障害等級

後遺障害等級については、別途、後遺障害等級表を掲げておきましたので、ご覧ください。この等級認定によって、自賠責上の賠償上限額が定まり、また、労働能力喪失率も定まってくることになります。また、後遺障害慰謝料についても、等級によって決まってきます。

4.等級認定申請手続

後遺障害等級認定を行うのは、損害保険料算出機構(旧自算会)の調査事務所です。等級認定申請を加害者の自賠責保険会社に申請を行い、自賠責保険会社が上記調査事務所に認定を依頼するという流れとなります。
後遺障害診断書は、自賠責保険会社が用意する診断書書式に、担当医師によって書き込んでもらうことになりますので、書式をあらかじめ自賠責保険会社から貰っておく必要があります。
なお、被害者請求を行う場合には、通常の等級認定となりますが、加害者の任意保険会社から一括して保険金の支払を受ける場合には、任意保険会社は、自賠責からの保険金分も自社で一旦立て替えて全額払うことになります。この場合、任意保険会社としては、後で、後遺障害等級が予想していたより低いと言われて、自賠責からもらう保険金が少なくなってしまっては損失が生じますので、あらかじめ、調査事務所に後遺障害等級の認定を依頼することになります。これを「事前認定」と言います。

5.異議申立

等級認定に不服がある場合は、異議申立を行うことができます。ただし、漫然と異議申立を行っても、認定が覆ることを期待はできません。後遺障害診断書がもれなく被害者の症状を記載しているか否か、本来、他覚症状(画像やその他の検査によって症状が現れていること)であるのに、自覚症状(患者が愁訴しているだけのもの)として記載されていないか、よく検討した上で、不足があれば、医師に新たな後遺障害診断書を書いてもらったり、意見書を提出してもらうことが必要でしょう。主治医を代えることも必要になる場合も多いです。

異議申立は、被害者請求の場合は、自賠責保険会社に直接、異議申立書を提出し、任意保険会社と話合っている場合には、任意保険会社に提出することになります。これら会社を通じて、一般には調査事務所の地区本部や本部に回付されることになっています。
この本部の結論に対して、さらに異議がある場合には、専門医の属する自賠責保険後遺障害審査会で審査されることになっています。高次脳機能障害など、判断が難しいケースの場合は、ここまで行うことも視野に入れなければならないでしょう。

なお、平成13年の改正自賠法を受け、平成14年から、財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構が設けられ、紛争処理を行うようになりました。調査事務所への異議申立が功を奏しないようであれば、ここに対して紛争処理申請を行うことも検討しなければなりません。