現代のクルマ社会では、誰もが、いつ、どこで交通事故に遭っても不思議ではありません。加害者であれば、示談代行付きの任意保険に加入している限り、賠償に関して法的知識がなくても対応できるのが通常ですが、被害者は、交通事故について一定の知識がないと大きく損をすることがあります。
- Q1.交通事故で被害者となりました。損害賠償請求をしたいのですが、どのような損害について、請求できますか?
- Q2.相手の保険会社から、私の方の過失が2割あると言われています。また、労災の支給を受けているので、それも引かないといけないと言われました。このような場合、計算方法はどうなるのでしょうか?
- Q3.交通事故の後、ずっと治療に通っているのですが、加害者の保険会社から治療費と休業補償の支払いを打ち切ると言われました。今後、どうすれば良いでしょうか?
- Q4.後遺障害診断書を医師に書いてもらい、保険会社に提出し、後遺障害の等級認定も受けました。そこで、保険会社から、示談金の提示を受けましたが、交通事故で保険会社が提示する金額は、裁判基準よりもかなり低いという話を聞いたことがあります。それは本当でしょうか?
- Q5.加害者が窃盗した自動車だったので、任意保険や自賠責保険を使うことができないと言われました。加害者には全然お金がないのですが、このまま泣き寝入りするしかないのでしょうか?
- Q6.弁護士に依頼した方がいいかどうか迷っていますが、どうしたらいいでしょうか?
- Q7.交通事故では、弁護士費用はどのくらいになるのでしょうか。また、着手金を支払う余裕がないのですが、そのような場合でも受けてもらえるのでしょうか?
Q1.交通事故で被害者となりました。損害賠償請求をしたいのですが、どのような損害について、請求できますか?
A1.一般に、「慰謝料」を請求する、などとよく言われますが、交通事故による損害賠償請求のうち、「慰謝料」はごく一部分に過ぎません。交通事故で請求が可能な主要な損害は、以下となります。
(1)財産的損害
イ 積極損害
・治療費
・付添看護費
・入院雑費
・交通費
・介護費
・装具費
・葬儀費
ロ 消極損害
・休業損害
・逸失利益
(2)精神的損害(慰謝料)
・傷害慰謝料
・後遺障害慰謝料
・死亡慰謝料
Q2.相手の保険会社から、私の方の過失が2割あると言われています。また、労災の支給を受けているので、それも引かないといけないと言われました。このような場合、計算方法はどうなるのでしょうか?
A2.交通事故では、上記の各損害を積み上げた総損害額から、被害者に過失がある時は、その分の割引(これを「過失相殺」といいます)を行い、原則として、その後に、労災支給金のような社会保険給付金など、交通事故によって受けた利益を差し引くことになります(これを「損益相殺」といいます)。
例えば、総損害額が1億、過失割合が2割、既受領の労災支給金が1000万円、加害者の保険会社から治療費を500万円支払ってもらっていた交通事故の場合、加害者から今後支給を受けうる金額は原則として、以下の通りの計算となります。
1億円×0.8-(1000万円+500万円)=6500万
ただし、労災支給金の中には、損益相殺の対象にならないものもありますし、被害者の受けた利益の中には、過失相殺の前に損益相殺を行うものもあります。詳しくは、過失相殺及び損益相殺をご覧ください。
Q3.交通事故の後、ずっと治療に通っているのですが、加害者の保険会社から治療費と休業補償の支払いを打ち切ると言われました。今後、どうすれば良いでしょうか?
A3.このように、交通事故に遭った後、治療費と休業補償の支払いのみを受け続けてきたものの、治療が長期間に及び、保険会社から支払いの打ち切りを通告されるケースは非常に多いです。ただ、打ち切りを通告されるということは、治療を延々と続けても、これ以上、症状の改善は望めず、症状固定の状況になってきているのに鑑みて、通告してきているという側面もあります。このような場合は、主治医に、症状が固定したとして、後遺障害診断書を書いてもらえるかどうかを確認しましょう。
交通事故では、加害者と最終的に示談するためには、症状の固定が必要です。傷害慰謝料は、交通事故の実務上、入通院期間を基準に決まることになっており、また、後遺障害の等級が認定されないと、後遺障害慰謝料や逸失利益の額が定まらないからです。
なお、通院期間が長くなればなるほど、傷害慰謝料の金額が増加すると思われている方が多いですが、実際には、経過観察の目的で通院をしているような場合には、その期間分はあまり慰謝料加算の基準にはなりませんので、長く通院すればよいというものではありません。詳しくは、症状固定と等級認定をご覧ください。
Q4.後遺障害診断書を医師に書いてもらい、保険会社に提出し、後遺障害の等級認定も受けました。そこで、保険会社から、示談金の提示を受けましたが、交通事故で保険会社が提示する金額は、裁判基準よりもかなり低いという話を聞いたことがあります。それは本当でしょうか?
A4.本当です。交通事故の慰謝料については、以下の3つの基準があります。
(1)自賠責基準
(2)任意保険会社基準
(3)裁判基準
例えば、後遺障害等級1級の場合、自賠責基準ですと、後遺障害慰謝料は1100万円、任意保険会社基準ですと1800万円程度、裁判基準ですと2800万円程度となります。
また、傷害慰謝料についてですが、入院1ヶ月、通院10ヶ月の場合、任意保険会社基準ですと、100万円余りの提示が多いですが、裁判基準ですと180万円程度となります。自賠責基準では、治療期間か実治療日数の2倍のいずれか少ない日数に4200円をかけます。
また、本来、逸失利益がある事例なのに、算定から除外されている交通事故のケースも私は多数見てきました。被害者の過失割合を実際よりも高くして計算してきている交通事故のケースも多いです。交通事故事件では、裁判をせずとも、弁護士が交渉に入っただけで、保険会社は裁判基準に切り替えて、金額の提示のし直しをするのが一般です。
Q5.加害者が窃盗した自動車だったので、任意保険や自賠責保険を使うことができないと言われました。加害者には全然お金がないのですが、このまま泣き寝入りするしかないのでしょうか?
A5.交通事故の加害車両について、自動車の所有者などが車を盗まれたことに責任がない場合、所有者の加入している自賠責保険や任意保険の適用はありません(「保有者」責任の問題)。しかし、このような交通事故の場合でも、実は被害者が加入している各種自動車保険による支払を受けられるケースも多く、また、政府の行っている保障事業からの支払を受けることができます。詳しくは、自動車保険、及び政府保障事業をご覧ください。
Q6.弁護士に依頼した方がいいかどうか迷っていますが、どうしたらいいでしょうか?
A6.交通事故では、損害の総額が低い場合には、保険会社が提示する金額が低めであるとしても、弁護士費用や手間暇を考えると、保険会社の提示額を受け入れた方が実際的である場合もあります。しかし、例えば、損害総額が200万円以上であれば、弁護士費用を考えても依頼する方が有利になる交通事故のケースが多いと言えます。ある程度の金額の交通事故事件の場合は、まずは弁護士に相談して、裁判基準ではどの程度の金額が見込めるのか、弁護士費用は幾らくらいなのか、確認してから判断するようにされると良いと思います。
Q7.交通事故では、弁護士費用はどのくらいになるのでしょうか。また、着手金を支払う余裕がないのですが、そのような場合でも受けてもらえるのでしょうか?
A7.交通事故事件の着手金については、以下の金額が目安となります。
(1)経済的利益が300万円未満の時、経済的利益の8%
(2)経済的利益が300万円以上3000万円未満のとき、経済的利益の5%+9万円
(3)経済的利益が3000万円以上のとき、経済的利益の3%+69万円
また、成功報酬については、この倍額が目安になります。
この経済的利益というのは、保険会社から提示された金額と、裁判基準で算出される金額の差額として計算いたします。また、着手金を支払う余裕がない時は、回収した金額から清算するという方法をとってくれる弁護士も多いと思いますし、上記はあくまでも目安ですので、弁護士とよく相談されると良いと思います。
